笠井アナの「僕のえいがの百三十科」#181

 コンフィデンスマンJP 英雄編   コーダ あいのうた  クライ・マッチョ

 

私が子供のころ大人気だった特撮人形劇「サンダーバード」が完全新作として蘇った。CGや合成を使わず当時の技術を使って制作したのだ。仕上がりは「ブラボー!」以外言いようがない。年明け、この興奮を、ぜひご家族で味わって!

  コンフィデンスマンJP 英雄編

果たして最後に笑うのは誰?
まったく先の読めない史上最大の騙し合いが始まる!

 めちゃくちゃ面白かった! 長澤まさみのダー子はこれ以上ないはまり役で絶好調。おおらかで自由奔放なお芝居にどんどん引き込まれた。脇を支えるボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)とのトリオネーションは今回も快調だ。何より今回3人が対立しながら物語が進んでいくというその構造が新たな魅力であり、やっぱり古沢良太の脚本にうなってしまう。オセロの駒が鮮やかに白から黒にひっくり返る瞬間の快感。それがまたひっくり返って、さらにまたひっくり返って。おいおい一体何回ひっくり返せば済むんだよー。と思いながら何度爆笑したことか。そしてあの俳優2人に対する目配せもきいていて、シリーズ最高傑作というのは噓ではない。

 ハズレのない当たりくじ、大吉しか入っていないおみくじとは、この作品のためにある言葉だろう。年明けぜひぜひ楽しんで。


Ⓒ 2022「コンフィデンスマンJP」製作委員会
1月14日(⾦) より全国東宝系にてロードショー

監督:田中亮
脚本:古沢良太

キャスト:
長澤まさみ 東出昌大 小手伸也/小日向文世
松重豊 瀬戸康史 城田優 生田絵梨花
広末涼子 織田梨沙 関水渚 赤ペン瀧川
石黒賢 梶原善 徳永えり 髙嶋政宏 生瀬勝久
真木よう子 角野卓造 江口洋介

  コーダ あいのうた

家族の中でたった一人健聴者である少女は「歌うこと」を夢みた。

 感動! 今年初めて「アカデミー賞最有力」なる言葉を聞いた作品だがむべなるかな。サンダンス映画祭で史上初めて4部門を受賞した注目のヒューマンドラマ。両親、兄が聾者で、ヒロインのルビー(エミリア・ジョーンズ)だけが耳が聞こえる4人家族。幼い頃から家族の手話通訳のためだけに生きているような彼女が、学校で歌の才能を見いだされ、初めて自分の生きたい道を歩もうとする姿を描く。

 聾者の両親がともにとても明るく、前向きな楽しい気持ちになれるのが第一の魅力。そこに聾者の困難もしっかり盛り込む。つまり耳の聞こえない家族たちは悲しいかな彼女の才能に気づけないのだ。そんな家族の中でもがくルビーがたまらなく魅力的。素直で正直で可愛らしくて、心の底から応援したくなるキャラクターを作り出している。

 しかも素晴らしい歌声に心が震えてしまうのだ。ゴールデングローブ賞、アカデミー賞と注目されていくのは間違いないと思う。


Ⓒ 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
1月21日(⾦)よりTOHOシネマズ 日比谷他、全国ロードショー!

監督・脚本:シアン・ヘダー

キャスト:
エミリア・ジョーンズ、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、マーリー・マトリン

  クライ・マッチョ

人は自分をマッチョに見せたがる。老いと共に無知な自分を知る。気づいた時は手遅れなんだ。

 クリント・イーストウッド91歳! ある種の感銘を受けた一作。「妻に連れ去られた息子を誘拐して来い」と頼まれた元ロデオのスター(イーストウッド)が親の愛を知らない少年とともに逃亡するロードムービーだ。

 さすがだなと思ったのは「老い」といったものを隠さず、過去の栄光を引きずる男として自らと重ねることを否定しない語り口。そして少年から学ぶものと、老いた自分が譲れない大切なものは何かということも忘れない。そうした中で、魅力的なレストランの女主人と出会うのだが、ここでラブストーリーが展開するのには驚いた。まだまだ現役ですよというイーストウッドの意地みたいなものを感じるのである。ここは評価が分かれるところかもしれない。自分の人生のさまざまな要素を入れ込み、これこそが集大成で幕引きの一本かも?と感じさせるため、見逃さない方がよいといえる。


Ⓒ 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
1月14日(金)全国ロードショー

監督・主演・製作:クリント・イーストウッド
原作:N・リチャード・ナッシュ「CRY MACHO」
脚本:ニック・シェンク、N・リチャード・ナッシュ

キャスト:
クリント・イーストウッド、エドゥアルド・ミネット、ナタリア・トラヴェン、
ドワイト・ヨアカム、フ ェルナンダ・ウレホラ

笠井信輔

フリーアナウンサー

1987年フジテレビアナウンス部入社後2019年10月よりフリーになる。
趣味の映画鑑賞は新作映画を年間130本以上スクリーンで観るほど。
舞台鑑賞は特にミュージカル、とりわけ宝塚歌劇団好き。

オフィシャル・ブログ
笠井TIMES『人生プラマイゼロがちょうどいい』

オフィシャル・インスタグラム
shinsuke.kasai