あの頃。 ラスト・フル・メジャー/知られざる英雄の真実 ある人質 生還までの398日
コロナで大作が次々と公開延期となる中、インディペンデント作品の存在感が増しています。実話の映画化作品が目立つんですよ。私好きなんで。すぐれた作品が多い。今回はそんな3本を選びました。事実は小説より…。
あの頃。
「ハロー!プロジェクト」にすべてを捧げた男たちの笑いと涙の青春の日々。
こういう青春ムービーもありなんだな。本作は、ハロプロの松浦亜弥に入れ込んだアイドル・オタクたちの愛と友情の物語。と書くと、コメディーと思いがちだがさにあらず。実話である。さすが「愛がなんだ」「his」など生き方が下手な者たちを描くことに定評のある今泉力哉監督だ。観ていて恥ずかしくなるほどのダメ男たちに次第に気持ちを寄せている自分がいた。オタクの主人公に二枚目の松坂桃李を配したところがまずいい。オタクの実態をまじめに描くことで、彼らがなぜアイドルファンをやめられないかがひも解かれてゆく。
共感と絆…。人間同士のつながりが希薄になりつつある中でうらやましくもある。「あの頃」はよかったと、男なら同じような体験をどこかでしているはずなのだ。
私?「あの頃」私は、森高千里のファンクラブに入ってた(コレ、ホント)。だから…わかる。
(C)2020『あの頃。』製作委員会
2月19日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督:今泉力哉
脚本:冨永昌敬
キャスト:
松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウ
ラスト・フル・メジャー/知られざる英雄の真実
ベトナム戦争で仲間を救った兵士の感涙ストーリー。
つくづく思う、名優というものは年老いても輝くのだと。ベトナム戦争時、激烈な地上戦から仲間を救うために、止めるのも聞かずヘリから地上に降りた空軍下級兵士についての実話だ。授与されるべき名誉勲章が彼に与えられなかった真相が明らかになる。そのための証言をする、当時戦闘の中にいた退役軍人役を演じるウィリアム・ハート(70)、エド・ハリス(70) 、サミュエル・L・ジャクソン(72)、そして ピーター・フォンダ (79)。 昭和の映画ファンにはたまらないオールスター。存在感が違う、説得力が違う。彼らが今も抱える苦悩がそのまま作品のテーマとなる。
日本における東日本大震災のように、アメリカの「ベトナム戦争」は今なお終わってはいない。明らかになるのは自分の身を挺してでも人の命を救いたいという崇高な精神。これは、戦場の「海猿」なのだ。
(C)2019 LFM DISTRIBUTION, LLC
3月5日(金)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー
監督:監督:トッド・ロビンソン
キャスト:
セバスチャン・スタン、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、エド・ハリス、サミュエル・L・ジャクソン、ピーター・フォンダ
ある人質 生還までの398日
ⅠSの人質となった写真家と、救出に奔走した家族の物語。
凄まじかった。フィクションなら、よくできた救出ドラマで緊張感が楽しめただろう。しかし、事実を忠実に再現と知って観ると、恐ろしさ、希望とあきらめ、悲しみと怒り、そして喜び…あらゆる感情に襲われた。写真家を目指す青年が軽い気持ちでシリアに入りイスラム国(IS)に拉致される。そこからの1年以上にわたる監禁生活を、拷問の実態をこれでもかと見せ切るのだ。
オレンジの服を着せられてネットに公開された処刑映像。日本人ジャーナリストも犠牲になったのを覚えているだけに、身につまされる。自ら戦地に出向いたのだから「自己責任」ではないか?という論争が吹き飛ぶような凄まじい体験なのだ。その一方で、青年の家族たちは何を想い何をしたのか?涙なしには見られなかった。「絶対に息子を助ける」というあきらない母の強さ、愛の深さを知る一本でもある。
(C)TOOLBOX FILM / FILM I VÄST / CINENIC FILM / HUMMELFILM 2019
2月19日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
監督:ニールス・アルデン・オプレヴ アナス・W・ベアテルセン
脚本:アナス・トマス・イェンセン
キャスト:
ダニエル・リューエスベン・スメド、ジェームズ・フォーリートビー・ケベル、アートゥアアナス・W・ベアテルセン、アニタソフィー・トルプ
笠井信輔
フリーアナウンサー
1987年フジテレビアナウンス部入社後2019年10月よりフリーになる。
趣味の映画鑑賞は新作映画を年間130本以上スクリーンで観るほど。
舞台鑑賞は特にミュージカル、とりわけ宝塚歌劇団好き。
オフィシャル・ブログ
笠井TIMES『人生プラマイゼロがちょうどいい』
オフィシャル・インスタグラム
shinsuke.kasai