ミセス・ノイズィ 泣く子はいねぇが 滑走路
「鬼滅の刃」のおかげで賑わいを取り戻りした映画館ですが、映画は「鬼滅」だけじゃありません!お正月映画は、大作サスペンス「サイレント・トーキョー」、爆笑「新解釈・三國志」、洋画は「ワンダーウーマン1984」など、他にもありますよ!
ミセス・ノイズィ
自分の考える「普通」や「真相」が本当に正しいことなのか?
インディペンデントな作品ながら実に快作! あの誰もが知る「騒音おばちゃん事件」。布団を叩きながら物凄い形相で叫ぶおばちゃんは、あの時、逮捕された。そして本作は、「実は真相はこうだったのかもしれない」というアナーザーストーリー。
自分なりの考えで事態をとらえてみると、見事に常識がひっくり返される。我々が目にしていた騒動の真相は、取材が追い付いていないだけで本当は違うところにある…という、時に報道で起きる現象を鋭く突いているのだ。クレーマーのおばちゃん(大高洋子)VS 被害者(篠原ゆき子)の激突は、本作の最大の見どころであるが、笑いながら見ているうちに最後は泣かされてしまう展開に拍手を送りたい。特に近年の篠原の芝居は「浅田家!」など、見るものの感情を揺さぶるものがある。次回主演作「女たち」にも大いに期待したい。
(C)『ミセス・ノイズィ』製作委員会
12月4日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国公開
監督 天野千尋、脚本 天野千尋、松枝佳紀
キャスト:篠原ゆき子、大高洋子、長尾卓磨、新津ちせ、宮崎太一、米本来輝、洞口依子、 和田雅成、田中要次
泣く子はいねぇが
大人になるとは? 人生から逃げてきた主人公は、大人に、父親に、なれるのか。
はっきりしない男、物事がうまくいかず立ち止まってしまうような男を演じるとどうしてこうも仲野太賀は〝 光る 〟のだろう。
三舞台は秋田、なまはげ存続の会で活動する主人公(仲野太賀)に娘が誕生するが、TVの生中継でとんでもない〝 事件 〟を起こしてしまい、父親として、人として、これからどう生きるべきか? と、 もがく葛藤の物語だ。
佐藤快磨監督は丁寧なシーンの積み重ねで、男とは本当にしょうもない生き物だと浮き彫りにしてゆく。そんな主人公を高みの見物をしながらも、あきれもせずに寄り添って共感してしまうところがこの作品の魅力でもある。そしてなんといっても、ナマハゲのシーンに思いがいってしまう。こんな切実なナマハゲがかつて映画にあっただろうか?タイトルの意味がどれだけ重いのかが、ラストシーンに、そのセリフに詰まっているのだ。
(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会
11 月20 日(金) より新宿ピカデリー他全国ロードショー
監督・脚本・編集:佐藤快磨
キャスト:仲野太賀、吉岡里帆、寛 一 郎、山中 崇、余 貴美子、柳葉敏郎 他
滑走路
歌人・萩原慎一郎による「歌集 滑走路」遺作となった唯一の歌集が完全映画化。
歌集を原作に映画を作ると一体どんな作品になるのか? しかも、それが32歳の若き歌人の唯一の歌集だと言うのだ。葛藤と深い悲しみに満ちた、しかし再生への力を込めた作品に仕上がっていた。親友同士だった2人の男子中学生。そしてそのうちの1人と淡い恋心で結ばれていく女子中学生の3人が軸となって物語が進む。同時並行で、厚生労働省で働く若手官僚の物語と、自分の将来に悩む切り絵作家の30代女性の物語が描かれる。
一見すると全く異なるこの3つのストーリーが徐々に交錯していくのだが、それがどのように繋がるのかがしばらくわからず、サスペンスフルでもある。中学生を演じている寄川歌太と木下渓が本当にみずみずしく、出色の芝居を見せる。2人が紡ぎ出す絶望の中の光。一方でこの怒りとむなしさは、どこにぶつけたらいいのだろうか…。
(C)2020「滑走路」製作委員会
11 月 20 日(金)全国ロードショー
原作:萩原慎一郎「歌集滑走路」(角川文化振興財団/KADOKAWA刊)
監督:大庭功睦脚本:桑村さや香
キャスト:水川あさみ、浅香航大、寄川歌太、木下渓、池田優斗、吉村界人、染谷将太、水橋研二、坂井真紀 他