加齢・ステロイド薬・糖尿病・紫外線などが引き金に
白内障は、眼の中の水晶体を構成するタンパク質が酸化し、変質することが原因で起こります。予防は難しいですが発症を遅らせたり、発症しても進行を遅らせたりすることが可能なケースもあり、なるべく早く眼科を受診することが大事です。
白内障のリスクと対策
白内障は眼の中のレンズの役割をする水晶体が濁ってしまう病気です。国内の患者数は一千万人ともいわれ、加齢に伴う発症が最も一般的で、早ければ40代から、80歳を超えるとほぼ全ての人が白内障になるといわれています。
一方で、少数ながら子供が発症するケースもあります。日本白内障学会では、加齢以外にステロイド薬、放射線、糖尿病、紫外線も白内障の危険因子として提示しています。実際、アトピー性皮膚炎の治療にステロイド薬を使っていたり、喘息の内服薬として吸入ステロイド薬を使っている子供や若い人が発症する例があります。また放射線を扱う医療従事者に症状が見られることがあり、糖尿病患者は健常者の5倍も白内障になりやすいといわれています。
発症を遅らせるには、紫外線を浴び続けないよう帽子やサングラスを併用することが大事です。ほかにも、パソコンはブルーライトカット用のフィルムや眼鏡などの対応をおすすめします。喫煙も要注意で、長期間タバコを吸っているとリスクが高まりますし、お酒の飲み過ぎも同様です。バランスのよい食事を心がけ、ルテイン(小松菜、ホウレンソウなど)、アントシアニン(ブルーベリー、ブドウなど)、ビタミンC(ピーマン、柑橘類など)、ビタミンE(アーモンド、植物油など)などを摂りましょう。
白内障の症状は目がかすむ、日差しをまぶしく感じる、片眼で見たときに物が二重に見えるなど。初期段階では自覚症状が少ない場合が多く、症状が出始めたら進行している可能性があります。
唯一の治療法は手術
一度濁った(白内障になった)水晶体を透明にする薬はありません。見えにくさを眼鏡で補うこともできません。白内障の唯一の治療法は、濁った水晶体を取り除き、代わりとなる人工のレンズを挿入する手術です。片眼ずつ、2週間間隔で行います。視力の回復は個人差がありますが、約1週間で落ち着いてきます。
人工レンズは一般に、健康保険が適用される「単焦点眼内レンズ」を用います。術後、老眼鏡または近視用眼鏡が必要となる可能性がありますが、近年、眼鏡への依存度を減らせる「多焦点眼内レンズ」も出てきているので、患者さんの希望や生活スタイルを考慮して決定します。
日本では年間160万件行われているポピュラーな手術ですが、病状が進行すると難易度が上がり、合併症が生じる可能性も高くなります。思い当たる人は治療を先延ばしせず、信頼できる眼科医になるべく早く相談されることをおすすめします。