「よくあること」と軽んじてはいけません
体調がよくないとき、「立ちくらみがひどい。貧血かな?」「階段を昇ると息が切れる。貧血かも」「だるいし気力も出ない。貧血に違いない」など、貧血を疑ったところで終わっていませんか? 実は重い病気のサインかもしれない貧血のこと、きちんと理解しましょう。
ポイントはヘモグロビン
貧血とは、血液中の赤血球成分が不足している状態のこと。医師は「赤血球」や赤血球に含まれる「ヘモグロビン」などを見て貧血かどうかを判断します。中でも大事なのがヘモグロビンです。
ヘモグロビンは鉄を含む赤い色素「ヘム」とたんぱく質の「グロビン」からできています。ヘムは全身に酸素を運ぶ重要な働きをしているため、ヘモグロビンが減ると体の酸素も減ってしまい、普段は苦でない坂道や階段で息切れしてしまうことに。また、足りない酸素を全身に回そうと心臓が一生懸命頑張り、脈が速くなります(逆にヘモグロビンが下がっていなければ、その症状には他に原因があるということになります)。
健康診断を受けた方は、採血結果のヘモグロビンを確認してみてください。当院では成人女性は11・3~15・3g /dL、成人男性は13・1~16・9g /dLが基準値で、この下限値を下回ると貧血と診断します。いつもは貧血でない方が10・0g /dL以下になると息切れや動悸、立ちくらみを自覚するようになります。ただ、貧血がゆっくり進むと体が慣れてしまうため、自覚症状が出ないこともあります。
MCVで貧血の種類を診断
医師はまた、採血結果の「平均赤血球容積(MCV):赤血球の大きさ」を見てどんな貧血なのかを考えます。
MCVが80fL未満→小球性貧血
最も多いのは鉄欠乏性貧血です。月経過多に代表される、出血によって生じる貧血で、鉄やフェリチン(鉄の蓄え)を測り当日診断できます。消化管出血の疑いがあれば、内視鏡検査などを行う場合もあります。
MCVが80~100fL→正球性貧血
さまざまな貧血の可能性があります。長く腎臓を患っている方は腎性貧血、血液の病気では再生不良性貧血や多発性骨髄腫、白血病が隠れていることもあります。
MCVが100fL超→大球性貧血
赤血球が寿命より早く壊れてしまう溶血性貧血、ビタミンB12や葉酸の不足でおきるビタミンB12欠乏性貧血および葉酸欠乏性貧血、骨髄に異常がおきる骨髄異形成症候群などが当てはまります。
このように、貧血の背後にはさまざまな病気が隠れており、詳しい検査が必要です(貧血の原因によって検査は異なります)。健康診断などで貧血と言われたら、まずは血液内科(お近くになければ初めは一般内科でも大丈夫です)を受診することをおすすめします。