中高年の「眠り」を考える
睡眠は、生活習慣と同様に健康と深く関係しており、健康を維持するうえでとても大切な役割を担っています。睡眠不足は肥満や高血圧、糖尿病といった生活習慣病を引き起こす要因となり、不眠が抑うつなど心の不健康につながることが指摘されています。
年齢によって変化する睡眠
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。レム睡眠は、脳が活発に活動している眠りです。ノンレム睡眠は脳が休息する眠りで、浅い眠りと深い眠りに分かれます。睡眠時間を年齢別でみると、15歳で約8時間、45歳で約6・5時間、65歳以降は約6時間と高齢になるほど短くなります。年齢とともにレム睡眠の時間は減少、深いノンレム睡眠が減少もしくは消失し、浅いノンレム睡眠は延長します。
加齢により睡眠・生体のリズムが変化し、睡眠時間が短くなるのはごく自然なことですが、この変化が入眠後の中途覚醒、早朝覚醒などの原因にもなっています。眠いのに寝つきが悪い、早朝覚醒や中途覚醒の後に眠りにつくことが困難など生活に支障がある場合は、病的な不眠や睡眠障害かもしれません。年齢によるものだと自己判断せず、医療機関に相談しましょう。
生活習慣の見直しを
不眠や睡眠障害の治療方法として、「睡眠衛生」の改善があります。睡眠衛生とは、生活習慣や嗜好品、寝室環境、運動や外出など、睡眠に影響する生活全般における習慣を見直していくことです。
睡眠衛生で重要なポイントは、①室温・照明などで就寝環境を整える②起床と就床時刻を整える③規則正しい食生活を心掛ける④明るい時間に日光を浴びる⑤夕刻以降に過剰の水分を摂取しない⑥夕方から夜(就寝の3時間位前)にかけて運動する⑦就寝前のカフェイン、アルコール、ニコチンの摂取は避ける⑧眠くなってから寝床に入るなどです。
高齢者が夜眠れなくなる原因に、長時間の昼寝があります。睡眠時間に固執せず、昼寝の時間を少なくして日中の運動量を増やすことが重要です。
睡眠衛生を実践しても改善しない場合は睡眠導入剤を考慮します。しかし、漫然と内服するのではなく、薬の減量、中止を視野に入れた治療が望ましいといわれています。
寝る前のリラックスも有効
眠れないからと寝床にいる時間を増やすだけでは、質の高い睡眠を得ることはできません。加齢による睡眠の変化は避けられないもの。まずは規則正しい生活を心掛けることから始めましょう。軽いストレッチやヨガ、心地よい音楽を小音量で聴くなど、寝る前に自分に合ったリラックス法の実践も有効です。