「唾液力」を高めて免疫力アップ

感染予防に重要なIgAの力!

ストレッチなどの軽い運動を

  唾液力の向上は、日常的にストレスを軽減することが大事。食生活の工夫や軽めの運動をしていきましょう。 まず運動では、さまざまな研究から、ウオーキングやヨガ、ストレッチなどの軽い運動が唾液力を高めることに効果的であることがわかっています。逆に、激しい運動は免疫力を低下させますから、特に寒さや乾燥で感染症のリスクが高まる時期は控えましょう。

 軽い運動の中では、ストレッチが血行をよくして体や脳の機能をリフレッシュさせることに加え、唾液の質を高めIgAの分泌量を増やし、免疫力向上に効果的です。5.10分ほどの軽いストレッチを毎日続けるのがよいでしょう

朝食前にも歯を磨こう

  食生活に関連して、毎食後の歯磨きは口内の細菌を増やさないために重要ですが、実は朝食前の歯磨きも大切です。就寝中は唾液がほとんど分泌されないため、寝る前に歯磨きをしても、朝までに歯周病菌などが増えてしまうからです。特に、誤嚥性肺炎などが気になる高齢の方には、朝食前の歯磨きがおすすめです。

嚥下機能と唾液力がともに向上

 食べ物を飲み込む力をきたえるための「嚥下体操」も、唾液力のアップに有効です。唾液量が減少する原因の一つに加齢があり、舌の周りの筋肉が老化するとともに、唾液腺の機能も低下します。それをカバーするのが嚥下体操です(下図参照)。

 もともと嚥下体操は、舌、.、口の体操を行うことで嚥下機能の衰えを予防するものですが、継続的に行ったところ、唾液中の活性酸素が減少したという研究報告がなされました。これにより、唾液中の抗酸化成分の働きが活発になったことが考えられるのです。

 特に、嚥下体操の中では舌の体操が大切です。それは、舌を動かす筋肉を日ごろからよく動かすようにすることで、加齢によって低下しがちな顎下腺と舌下腺の機能低下予防に役立ち、唾液量の減少を抑えるからです。起床時や入浴中などに継続するとよいでしょう。

繊維質が豊富な食材を摂る

  食生活の工夫では、ゴボウなどの食物繊維の豊富な根菜類を積極的に摂取するのがおすすめです。食物繊維には腸管を刺激して腸内の免疫力を高める効果があり、同時に唾液中に含まれるIgAを増やす作用があります。毎日の食事の中に、継続してうまくとり入れられるよう工夫しましょう。 料理をつくるときに、食材を大きめに切ることも意識してみましょう。自然と咀嚼する回数が増え、唾液量も増加します。

緑茶からぬるめのお湯で抽出

 唾液量を増やすには、水やお茶などでのこまめな水分補給が大事になります。特に乾燥しやすいこの季節は、日常的に水分を摂ることを心がけたいものです。

 また、緑茶の茶葉に含まれるエピガロカテキンというカテキンは、唾液中のIgAを調整して免疫力を高めることに寄与します。ただし、エピガロカテキンは熱いお湯で抽出すると減少してしまうので、60℃以下のぬるめのお湯で淹れるようにしましょう。カフェインの利尿作用も抑えられます。

ヨーグルトを継続して摂取

 唾液の量や質を向上させるには、乳製品を積極的に摂ることが有効です。ただ、牛乳は年齢や体質により「おなかがゴロゴロする」といったことが起こるので、そうした影響が少なく、消化もよくて摂りやすいヨーグルトがおすすめです。

 100g程度のヨーグルトを毎日食べることで、唾液中のIgA濃度を高め免疫力が上がる効果が期待できます。ここで大切なのは継続して摂取することです。実は、腸の中には乳酸菌を「貯菌」することはできないからで、ヨーグルトを継続して食べると、継続後2カ月くらいから効果が期待できます。

 乳酸菌によっては、IgAの分泌を増やす効果を発揮するだけでなく、ほかの免疫細胞も刺激し、感染症予防に役立つこともわかってきています。

 神奈川歯科大学の槻木先生らは、R-1乳酸菌を使用したヨーグルトを継続摂取することで、唾液中のIgAにどのような影響が表れるか試験を行いました。これは、高齢者施設の入居者協力のもと、R-1乳酸菌入りのヨーグルト112gを毎日食べてもらい、3カ月後の唾液の変化を調べたものです。 その結果、R-1乳酸菌の継続的な摂取により、唾液中のIgA濃度と分泌速度がともに向上することがわかりました。さらに、唾液自体の分泌量も増えるという、興味深い試験結果を得ることもできました。

 槻木先生は、「R-1乳酸菌は、代表的な免疫細胞であるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性などに寄与し、免疫系に影響を与えることがわかっていますので、免疫抗体であるIgAにも同じように働いていることが一つ考えられます。また、消化器の中でヨーグルトを代謝するときに産出される短鎖脂肪酸は、IgAの産出を増やすことが実験でわかっていますので、それが関わっていることも考えられます」と話します。今後の研究により、R-1乳酸菌による免疫力向上のメカニズムが、さらに解明されていくでしょう。