映画『みをつくし料理帖』 2020年10月16日(金)より全国公開

公開記念インタビュー 主演・松本穂香

松本穂香

 人気時代小説『みをつくし料理帖』が映画化され、公開間近です。この映画は、角川春樹氏の生涯最後の監督作という渾身の作品であること、若手実力派女優の松本穂香さんが主人公の澪を演じていること、かつて角川映画を彩ってきた大物俳優が多数出演していることなど、公開前から話題満載、いやが上にも期待が高まります。おいしそうな料理におなかが鳴ったり、不変の友情に涙したり、松任谷由実さん書き下ろしの主題歌にも胸キュンな心温まる物語です。

「私も澪のような存在であれたら、そんな気持ちで演じました」

 主人公の料理人・澪を演じる松本穂香さんにお話を伺いました。映画で共演された皆さんが「澪そのまま」とおっしゃるように、まっすぐな視線で丁寧に答えてくださるその表情に、一途でけなげな澪の姿が重なって見えるようでした。

角川春樹最後の監督作品

本作の主演の話が来たときはどう思われましたか?
 「角川監督が映画をこういうものにしたいとおっしゃるスケールがとても大きく、さらに最後の作品だと伺って、『私でいいのかな』と変な汗が止まりませんでした。でも私が演じたドラマを見てくださって『イメージする澪の姿にぴったりだと思った』と監督に言っていただき、頑張りたいという気持ちになりました」

角川監督とお仕事をされた印象を教えてください。
 「最初の本読みの際、『今回は時代劇だからそうじゃないよ』と指摘されました。時代劇は少しゆっくりセリフを立てて話す(高低・強弱・間などを使って伝えたい言葉を強調する)など、現代劇とは空気感が全然違いました。初めての時代劇だったので知らないことが多く、それらを基本から教えていただきました。また『もっと前向きに』や、『そこは元気な感じで』などの指示をいただき、違和感をなくしていきました」

角川映画を代表する俳優さんが多く出演されていました。
 「石坂浩二さんは金田一耕助のパンフレットを見せてくださいました。そんな角川映画の歴史に、私も加わると思うとすごく不思議な気持ちになりました。今回、石坂さんの役はおじいちゃんなので、スタートの声がかかるとサッと年をとる。そしてカットがかかるとシャンとする、その落差に驚きました。そしてずっと座らないんですよ、石坂さん。なので私も座りませんでした(笑)。若村麻由美さんは時代劇の経験が豊富なので、歩き方や座り方など所作をたくさん教えていただきました」

江戸の料理人になるため

他に大変だったことは?
 「お椀の持ち方ですね。味見のときなどに持ち方が変だと、大きなスクリーンで目立ってしまうので。現場で先生からずっと注意されていた意味が完成作品を見てよくわかりました。料理しているからこそ余計に細かいところ、指先まで意識しなくてはいけないんだなと思いました」

料理教室に通われたのですね?
 「服部幸應先生が映画の監修という関係で、事前に服部栄養専門学校で勉強させてもらい、劇中に出てくる料理は一通り作りました。包丁もこの映画のために作っていただき、皮のむき方や切り方、味見の仕方など、料理人特有の動きを教わりました。また、かつお節は当時小刀で削っていたというので、そのシーンが入るかどうか未定でしたが、一応練習しておきましょうということで、小刀とかつお節1本をもらって自宅で練習しました」

共演の方々が「松本さんは澪そのもの」とおっしゃっていますね。
 「澪は『私についてきて』というタイプではなく、とにかくけなげで一生懸命頑張っているから周りの人も『この子を支えたい、力になりたい』という気持ちに自然となっていく。私も現場でそういう存在であれたらいいなと思っていました。窪塚洋介さんたちが『澪のまんまだね』と言ってくださるのはすごくうれしかったです。ちゃんと澪になれているのだと自信になりました」

最後に、この映画の注目点は?
 「往年の角川映画ファンには、出演俳優の大集結が楽しいのではないでしょうか。女性の友情をメインに描いた映画はあまりないので、どの世代の方にも新鮮に楽しんでいただけると思います。また、澪が思いを寄せる小松原役を窪塚さんが演じるという意外性もあり、窪塚さんファンの男性たちにも楽しんでいただけるのではと思います」

まつもと・ほのか

1997年2月5日生まれ、大阪府出身。短編映画『MY NAME』(2015年)で女優デビュー。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年)、CM「意識高すぎ!高杉くん」(2018年〜)、テレビドラマ『この世界の片隅に』(2018年)などへの出演で注目を集める。2020年には公開映画6本に出演(うち4本主演)するなど引っ張りだこ。